toyama-rouzan's blog

富山勤労者山岳会(略称:富山労山)の山行報告です

天狗原山

  • 2009年1月25日(日)
  • 機関車さん、オギさん、コボさん、キヨさん、テレマーカーMさん、大ちゃんと浅ちゃん(めっこ山岳会)、スキーヤーK(L記)
  • 魚津4:30 ⇒ 850m小谷温泉7:00 ⇒ 980m栃の樹亭7:30 ⇒ 1055m尾根取付き8:10 ⇒ 1200mブナタテ尾根9:10 ⇒ 1741mピーク11:20 ⇒ 1945mピーク付近12:20 ⇒ 2197m天狗原山13:30 ⇒ 2130mコルから浅海川へ14:10 ⇒ 1650m登り返し点15:10 ⇒ 金山南西尾根15:40 ⇒ 林道(橋)17:20 ⇒ 小谷温泉18:30

夏のお花畑が素晴らしい天狗原山、冬はどんな景色が広がっているのか見てみたいと思ってはいたものの、自分には無理なコースだと諦めていた。はずなのに・・・「めっこ山岳会」の大ちゃんからお誘いがかかったら、なぜだか行けるような気がして、精鋭ラッセル隊員をスカウトして、めっこチームと合同山行となりました。

前日に小谷温泉から栃の樹亭まで除雪されていたという情報に喜んでいましたが、チェーンがかかっていて進入できません。 仕方なく板を担いで歩き、栃の樹亭からシールを着けてスタート。林道の1055m地点から取り付きました。 空はだんだん青くなって予想外の快晴です。

前日からの低気圧でラッセルを覚悟していたのに、頚城方面は全く降らなかったようで、パウダーは期待薄。凍った上に薄くサラサラの雪が乗っている急斜面は、シールが滑って登り辛くて疲れます。これは苦戦を強いられそうな予感・・・
1200m辺りで尾根に乗りました。ブナタテ尾根はまるでインターバルトレーニング。急斜面を登ったら、しばらく平坦になり、また急斜面を木の枝に掴まったりして登ったら、平坦になり。

状況を見て、行けそうならば金山のコルから浅海川へ、無理なら行ける所まで行って尾根を戻りましょう。という話しでしたが、こんな痩せて薮だらけの急な尾根、無傷で滑り降りる自信は200%ありません。何としてでも頂上まで辿り着いて沢から下りたい!藪でも岩でも滑らなくてもいいなら登るから!

日頃から「いかに楽して登るか」をモットーに登りのルート攻略をしている労山チームは、崖マークの付いてる1741mピークは当然巻いて行くもの、と思っていたのですが・・・若くて体力バリバリのめっこコンビには、そんなもの何の問題にもならないようで、藪だらけの急登をもろともせず、忠実に尾根を登り上げ、1741ピークの崖の上へ。そういえば、夏道も崖の上だったよな〜と今頃になって思い出しながら、悪戦苦闘。
中高年労山チームは、この予想外の展開でかなり体力を消耗してしまいました。完全に事前の打ち合わせ不足でした。ごめんなさい(>_<)

雪庇の張り出したヤセ尾根を越えたら、ゆるやかなアップダウンの続く巨大モンスターの森の始まり。ところが、雪が降っていないので、立派なモンスターは見られず、チビモンばかりでちょっとがっかり。登ったり下りたりで一向に標高が稼げないので、時間ばかりが気になります。
1949mピークの近くで休憩。しばらく斜面をトラバースしてから、天狗原山を目指して登り始めます。登るにつれ、眼下に素晴らしい景色が広がっていきます。この角度から見る雨飾山は鋭角でとてもカッコイイ!

やがて山頂が見えて来ました。なんて美しい!真っ白で滑らかなソフトクリームみたいです。


なだらかな山頂からは360°の大展望。焼山が手が届きそうに近くに見えました。いつまでも眺めていたい景色ですが、時間がありません。急いで集合写真を撮って、滑走準備。

天狗原山と金山とのコルまで下りて、いざ、浅海川へ。雪は重いパウダーで、傾斜のゆるい所では止まってしまいそうで、ほとんど直滑降です。谷はどんどん深くなって、逆三角形の白い窓から北アの山並みが覗く、今まで目にしたことも無い風景です。谷の両側の斜面は切り立って、至る所で雪がパックリ口を開けていて、いつ雪崩れてもおかしくない感じ。

真っ白い紙にすーっとはさみを入れるように、大ちゃんが谷の底を滑って行くのを、固唾を飲んで見守り、OKの合図で1人ずつ、慎重に、でも素早く続きます。全員揃った所でまた大ちゃんが斬り込みます。
浅ちゃんがバランスを崩して転んだ瞬間、左の斜面の中腹がナイフで切ったようにスパッと割けて、サーッと表層雪崩が起こりました。幸い崩れた雪の量は少なく、浅ちゃんはすぐに立ち上がりました。緊張の連続です。いつか本で読んだ「雪のトラップ」という言葉を思い出しました。この谷はトラップだらけ。

急なカーブを切ってしばらく行った所が、1650m金山南西尾根への登り返し地点。しかし、ドクター早川の山行記録で見た覚えのある斜面は、上部の雪がパックリ割れています。谷はその先益々細くなり、デブリも見えます。様子を見に行った大ちゃんからもNGの返事。残された選択肢はここだけ。。。いつ崩れてもおかしく無さそうな、無木立の急斜面、ていうか、崖でしょ。

みんなを大変な山行に誘ってしまった・・・という思いを後悔にしない為には、何としてもここを登りきって無事に帰らないといけません。「よし、行くぞ!」と小声で気合を入れて挑みました。進入してみると、思ったより雪は安定していて崩れそうな気配はありません。大丈夫。これなら行けそう。急斜面のラッセルで息が上がってきた所へ、浅ちゃんがハイスピードで追いついて来てトップ交代。
無事に崖の上まで上がって一安心。そのまま1750mの小ピークまで登ったら金山南西尾根。地図で見る限りでは、広くて滑りやすそうな尾根ですが、目指す谷はまだ遥かに遠く眼下に見えます。

上部のブナ林は雪質が良く藪も少なくて気持ちよく滑れましたが、段々藪が増えて雪も重くなって来ました。足に登りの疲れが来てます。滑るのに一生懸命で、もう地図を広げている余裕はありません。ルートファインディングは、めっこコンビとベテラン勢に任せ、とにかく遅れないように、みんなの後ろを着いて行きます。
1100m辺りの平坦な所まで下りて、再びシールを着けました。もう空がうっすらと夕焼けています。最後の難関、林道への崖(まただよ!)を藪を掻き分けズリ落ちて、デブリを乗り越え、ようやく橋に到着。あと30分も遅れていたら、真っ暗な崖をヘッデン頼りに下りなればいけない所でした。ギリギリセーフです。
薄暗くなってきた林道を戻り、栃ノ樹亭で街灯の明かりの下でシールを外して、とうとうヘッデンの出番。林道の端に残った雪を拾いながら滑っていましたが、足を取られて転倒した拍子にヘッデンを飛ばして無くしてしまいました。手足や友達を無くさずに下山できたから、まあいいか。。。
とっぷり暮れた小谷温泉に無事下山。労山チームはみんな疲労感と安堵感で気が抜けたよう。でも、めっこコンビはケロッと元気で、「これからナイターに行こうか」なんて、ジョークなのか本気なのかわかりません。恐るべき体力と精神力に脱帽です。
道の駅で大急ぎで温泉に入り、ようやくまともな食事にありつき、お腹もほっとしました。
長くて大変な一日でしたが、穏やかな天候に恵まれ、めっこの大ちゃん浅ちゃんコンビと、ベテラン勢に助けられて、滅多に来る事のできないコースを無事制覇できました。ありがとうございました。
でも、帰りの車の中まで、私が今日のリーダーだったとは、知らなかった・・・(^_^;)