toyama-rouzan's blog

富山勤労者山岳会(略称:富山労山)の山行報告です

【第37回 全国雪崩事故を防ぐための講習会】

2023年2月3日(金)~2月5日(日)  

★主催:日本勤労者山岳連盟
★場所:長野県白馬・栂池高原
★当会からの参加者:1名 しげっち

 全国雪崩講習は、地方講習の講師を受講対象にしており、一般の労山会員は、北陸地方雪崩講習などの地方講習会に役割分担されている。コロナ禍の事情より3年ぶりの開催となったが今回は、地方雪崩からの受講生は募集せず全国雪崩講師のレベルアップのための場となった。北陸雪崩からは、石川県のHさんとしげっちの2名が参加した。
 講習は「サーチ&レスキュー」を行うグループと「雪質・行動判断」のグループに分れ、しげっちは「雪質・行動判断」に加わる。今回の開催場所のなった栂池高原スキー場近くの天狗原東斜面では1週間前に外国人5人が雪崩に巻き込まれ2名が亡くなる事故があり、不謹慎ではあるが積層構造を学ぶには絶好の機会であった。
 具体的には、鵯峰のコルの北西斜面、東斜面、北斜面、南斜面と方位を変えて2日間で計4ヶ所のピットを掘り、各斜面での積雪断面の違いを観察した。積雪断面には、1/14の降雨による融解凍結クラストと1/19~23の昇温による融解凍結クラストのサンドイッチ構造となっており融解凍結クラスト層の上にこしもざらめ雪が観察された。4ヶ所掘ったピットの融解凍結クラストの基本構造は同じであったが融解凍結クラストのサンドイッチの上載積雪の厚みが違っていた。雪は風に運ばれるため、吹き溜まりとなる斜面は弱層が深く埋まり、風上の斜面は弱層の深さが浅くなる。鵯峰のコルではこしもざらめの弱層は雪面から130cm下で、ショベルコンプレションテストはCTH27RP@20cmとこしもざらめ層での破断は無かった。靴底貫通またはスキー貫通+70cm以上の下層は、表層の衝撃が弱層まで届かないと言われておりCTでの結果に表れている。 ただし、弱層の上載積雪量は、その山域で一様に積もっているわけではなく、成城大小屋付近林道の斜面での弱層の上載積雪は、60cmで薄かった。よって山頂で観察した弱層が表層から伝播しない1m以上あっても行動ルートによっては1m以下になり雪崩を誘発する事になる。今回、雪崩事故から1週間の積雪を観察できたことにより こしもざらめ雪への理解ができたことは成果だった。

白馬気象データ

積雪観察